こんにちは、わかばやしクリニック 内科です。

糖尿病とは
糖尿病は、血糖を下げるインスリンの働きが不足し、血液中のブドウ糖が多い状態(慢性の高血糖)が続く病気です。日本人の多くは、体質に生活習慣が重なって起こる2型です。診断は、血糖値やHbA1c(6.5%以上が基準の一つ)などで行います。HbA1cは、過去1〜2か月ほどの血糖の状態を反映する検査です。
厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、「糖尿病が強く疑われる者」は約1,100万人と推計され、増加傾向にあります。20歳以上では男性の17.7%、女性の9.3%が該当し、さらに「糖尿病の可能性を否定できない者」(いわゆる予備群)も約700万人と推計されています。しかし、糖尿病を指摘された方のうち、現在治療を受けているのは67.4%と約3人に2人にとどまりました。初期はほとんど症状がないため、健診で指摘されても放置してしまう方が少なくありません。
合併症のリスク
高血糖が長く続くと血管が傷み、全身に合併症が起こります。細い血管の障害として網膜症(目)・腎症・神経障害、太い血管の障害として心筋梗塞や脳梗塞などがあります。特に細い血管の合併症は、HbA1cが高いほど起こりやすいことが知られており、血糖コントロールが予防の要となります。
目の病気
糖尿病網膜症は、網膜の血管が傷んで出血やむくみを起こす病気で、進行するまで自覚症状が乏しいのが特徴です。2019年度の全国調査では、新たに視覚障害と認定された原因疾患の第3位(10.2%)でした。網膜症のほか、白内障や緑内障など目の他の部位にも障害が起こりえます。糖尿病と分かったら一度眼科を受診し、その後も眼科医の指示に従って定期的に検査を受けましょう。
神経障害・大血管障害 神経障害では手足のしびれや感覚の低下が起こり、足の小さな傷に気づきにくくなります。日頃から足を観察することが大切です。また、動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるため、血糖だけでなく血圧や脂質の管理、禁煙も重要です。
歯周病 糖尿病と歯周病は互いに悪影響を及ぼし合う「双方向」の関係にあります。糖尿病があると歯周病が進行しやすく、歯周病による慢性的な炎症は血糖コントロールの妨げになりえます。久山町研究など、歯周病があると糖尿病になりやすい可能性を示す研究もあります。35の臨床試験を解析したコクランレビューでは、歯周病の治療により3〜4か月後のHbA1cが平均0.43%低下したと報告されています(効果には個人差があります)。歯科との連携も大切です。
食事療法と運動療法
治療の土台は食事と運動です。
- 食事:ご自身に適したエネルギー量の範囲で、主食・主菜・副菜をそろえ、野菜など食物繊維を含む食品を取り入れます。糖尿病だから食べてはいけないものがあるわけではなく、量やバランスが大切です。ゆっくりよく噛む、朝昼夕を規則正しく食べる、腹八分目にとどめる、夜遅くや寝る前には食べない、といった日々の心がけが効果的です。極端な制限は自己判断で行わず、医師や管理栄養士にご相談ください。
- 運動:ウォーキングなどの有酸素運動を週150分以上、週3回以上(運動しない日が2日以上続かないように)、スクワットなどのレジスタンス運動を連続しない日に週2〜3回行うことが目安です。令和6年の調査で運動習慣のある方は34.6%にとどまります。運動はインスリンの効きを良くし、体重や血圧、脂質の改善にも役立ちます。食後に運動をすると、食後の血糖上昇が和らぐことがあります。運動の前後には5分程度の準備・整理運動を行いましょう。インスリンや一部の飲み薬を使っている方は低血糖にも注意が必要です。合併症のある方は、事前に主治医へご相談ください。
治療方法
血糖の乱れが中等度以下であれば、まず食事療法と運動療法を行い、2〜3か月続けても目標に届かない場合に薬物療法を検討します。飲み薬には、インスリンの効きを助ける薬、分泌を促す薬、糖の吸収や尿への排出を調整する薬などがあり、注射薬にはインスリンやGLP-1受容体作動薬などがあります。
血糖コントロールの目標は、合併症予防のためにHbA1c 7.0%未満が基本です(血糖正常化を目指す場合は6.0%未満、治療強化が難しい場合は8.0%未満)。年齢や合併症、低血糖のリスクなどに応じて個別に設定します。薬には低血糖などの副作用もあるため、医師の指示どおりに使用し、症状がなくても自己判断で治療や通院を中断しないことが大切です。
糖尿病性腎症と透析のリスク
腎臓は細い血管の集まりで、高血糖が続くと傷んで糖尿病性腎症になります。初期は無症状ですが、進行すると腎機能が低下し、透析が必要になることがあります。
日本透析医学会の2024年末の調査では、透析を受けている方は約33万7千人(国民約367人に1人)で、この年に新たに透析を始めた方は36,404人でした。新規導入の原因疾患の第1位は糖尿病性腎症で、37.6%を占めます。割合は近年減少傾向ですが、依然として最多です。透析導入時の平均年齢は71.7歳で、高齢化も進んでいます。
早期発見には、血糖だけでなく尿中アルブミン検査が有用です。腎機能は血液検査(eGFR)で評価します。血圧・脂質の管理や禁煙も大切です。令和6年の食塩摂取量は平均9.6gで、目標の7gを上回っており、減塩も腎臓を守る生活習慣の一つです。自覚症状のない早期の段階で治療を始めることで、進行を抑えられる可能性があります。
Q&A
Q1. 健診で血糖値の異常を指摘されましたが、症状はありません。
A. 症状がなくても早めにご受診ください。HbA1cが6.0%以上6.5%未満は「糖尿病の可能性を否定できない」段階とされ、この時期の生活習慣の見直しが大切です。糖尿病が疑われる場合は、血糖やHbA1cに加え、尿検査などで合併症の有無も確認します。
Q2. 甘いものは一切食べられませんか?
A. 食べてはいけないものはありません。量や食べるタイミング、全体のバランスを整えることが重要です。
Q3. 眼科や歯科にも通う必要がありますか?
A. はい。網膜症は進行するまで自覚症状が乏しく、歯周病も血糖コントロールに関わります。眼科は少なくとも年1回を目安に、眼科医の指示に従って定期的に受診しましょう。
Q4. 運動はどのくらい行えばよいですか?
A. 有酸素運動は週150分以上が目安です。体調や合併症に合わせ、主治医にご相談のうえ無理なく続けましょう。
Q5. 血糖コントロールの目標は、みな同じですか?
A. いいえ。年齢、合併症、低血糖のリスクなどで個別に設定します。65歳以上の方では、認知機能や日常生活動作、低血糖を起こしやすい薬の使用の有無によっても目標が異なります。
Q6. 透析にならないために、今できることはありますか?
A. 血糖・血圧・脂質を良好に保ち、禁煙し、定期的に尿検査と血液検査を受けることが基本です。早期に腎臓の変化に気づけるよう、かかりつけ医と検査の頻度を相談しましょう。
糖尿病は、早い段階から適切に向き合うことで、合併症の進行を抑えられる可能性があります。気になる健診結果がある方は、お気軽にご相談ください。
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参考文献・ガイドライン
- 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂
- 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2024. 文光堂
- 厚生労働省:令和6年国民健康・栄養調査結果の概要(2025年12月公表)
- 日本透析医学会:わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在). 日本透析医学会雑誌 58(12): 524-, 2025
- Matoba R, et al.:A nationwide survey of newly certified visually impaired individuals in Japan for the fiscal year 2019. Jpn J Ophthalmol, 2023
- Simpson TC, et al.:Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev, 2022; CD004714.pub4
- 日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
- 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター:糖尿病の食事のはなし
- 厚生労働省 e-ヘルスネット:糖尿病と運動(運動療法)
監修者:
わかばやしクリック 内科
小林直人 著・編
(内科学会認定医・腎臓学会認定専門医)