こんにちは、わかばやしクリニック 内科です。

1. 脂質異常症とは
血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉)やHDLコレステロール(善玉)、中性脂肪のバランスが崩れた状態です。LDLコレステロールが高い場合を「高コレステロール血症」、中性脂肪が高い場合を「高中性脂肪血症」と呼びます。痛みなどの自覚症状はほとんどなく、健診で初めて指摘される方が大半です。
診断の目安は次のとおりです(空腹時採血)。
- LDLコレステロール:140mg/dL以上(120〜139mg/dLは境界域)
- HDLコレステロール:40mg/dL未満
- 中性脂肪:150mg/dL以上(食後など随時採血では175mg/dL以上)
- non-HDLコレステロール:170mg/dL以上
原因は、食事、運動不足、肥満、飲酒、喫煙などの生活習慣と、体質(遺伝)です。ほかの病気や服用中の薬が影響することもあります。
2. 最新の統計
2023年の厚生労働省「患者調査」では、脂質異常症で医療機関にかかっている方は推計約458.7万人でした。男性約152.7万人、女性約306.1万人で、女性が男性の約2倍です。2020年調査の約401万人から増加しています。一方、健診で脂質異常を指摘された約3.3万人を調べた研究では、180日以内に医療機関を受診した方は約18%にとどまっていました。
3. 放置した場合の主な合併症
脂質異常を放置すると、コレステロールが血管の壁にたまり、血管が硬く狭くなる「動脈硬化」が進みます。その結果、次のような病気につながることがあります。
- 心臓:狭心症、心筋梗塞
- 脳:脳梗塞
- 足の血管:末梢動脈疾患(歩くと足が痛むなど)
- 中性脂肪が著しく高い場合:急性膵炎、脂肪肝
糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、喫煙などが重なると、動脈硬化はさらに進みやすくなります。
4. 食習慣と運動
食事のポイント
- 肉の脂身、バター、生クリーム、洋菓子などに多い「飽和脂肪酸」を控えます。
- 魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、未精製の穀物を増やし、食物繊維を意識して摂ります。
- 揚げ物や加工食品に含まれるトランス脂肪酸を減らします。
- 卵黄・魚卵・内臓類など、コレステロールの多い食品は食べ過ぎないようにします。
- 中性脂肪が高い方は、甘い飲み物、菓子類、果物の摂り過ぎ、アルコールに注意します。
- 食塩は1日6g未満を目安にします。
運動と生活習慣
- 速歩などの有酸素運動を、毎日合計30分以上(週180分程度)行うことが目安です。
- 難しい場合は、まず「今より10分多く体を動かす」ことから始めましょう。
- 肥満がある方は、体重を少し減らすだけでも検査値の改善が期待できます。
- 禁煙は血管を守るうえで重要です。
5. 治療薬の種類と特徴
生活習慣の改善を基本とし、検査値や動脈硬化の危険因子の有無に応じて薬を選びます。
LDLコレステロールを下げる薬
- スタチン:肝臓でのコレステロール合成を抑える、治療の中心となる薬です。
- エゼチミブ:小腸からのコレステロール吸収を抑えます。
- 陰イオン交換樹脂:腸内で胆汁酸と結合し、コレステロールの排泄を促します。
- プロブコール:コレステロールの代謝・排泄に働きます。
- PCSK9阻害薬・siRNA製剤(注射薬):LDL受容体を増やします。スタチンで効果が不十分な場合や家族性高コレステロール血症など、限られた場面で使います。
- ベムペド酸:2025年11月に発売された飲み薬で、コレステロールの合成経路に働きます。スタチンで効果が不十分な場合や、使いにくい場合の選択肢です。
中性脂肪を下げる薬
- フィブラート系薬・ペマフィブラート:肝臓での中性脂肪の合成を抑え、分解を促します。
- n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA製剤):中性脂肪を下げます。
- ニコチン酸系薬:脂質の代謝に働きます。
6. 服薬の注意点
- 自己判断で中止・減量しないでください。やめると数値が元に戻りやすくなります。
- 筋肉痛、脱力感、赤褐色の尿が出たら、すぐに受診してください。スタチンやフィブラート系薬では、まれに横紋筋融解症が起こります。
- 肝機能・腎機能などを確認するため、定期的な採血が必要です。
- スタチンとフィブラート系薬の併用は、腎機能が低下している方では特に慎重な判断が必要です。
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中の方は、使えない薬があります。必ず事前にお伝えください。
- 一部の薬は、グレープフルーツ(ジュース)との相性に注意が必要です。
- 市販薬、サプリメント、他院の処方薬は、すべて医師・薬剤師に伝えてください。
- 陰イオン交換樹脂は便秘や、他の薬の吸収低下を起こすことがあります。服用時間の指示を守ってください。
7. Q&A
Q1. 症状がないのに治療が必要ですか?
A. 動脈硬化は自覚症状なく進みます。検査値と他の危険因子をふまえ、治療の必要性を判断します。
Q2. 食事と運動だけで改善しますか?
A. 改善する方は多くいます。ただし体質の影響が大きい場合は、薬が必要になることもあります。
Q3. 薬は一生飲み続けるのですか?
A. 個人差があります。検査値や生活習慣の改善状況をみて、医師が継続の必要性を判断します。
Q4. やせていても脂質異常症になりますか?
A. なります。体質や年齢の影響があり、特に女性は閉経前後から増えるといわれています。
Q5. 採血前に気をつけることは?
A. 10時間以上の絶食が目安です。水やお茶などカロリーのない飲み物は摂って構いません。
Q6. 健診で「要受診」と言われたら?
A. 数値が軽くても、他の危険因子との組み合わせで治療が必要になる場合があります。早めに医療機関へご相談ください。
脂質異常症は、症状がないまま進行することが多い病気です。健診などで数値を指摘された方や、ご自身の数値が気になる方は、わかばやしクリニック(内科)へご相談ください。
当院内科診療については、こちらをご覧ください。
引用文献
- 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版(2022年)
- 厚生労働省 令和5年(2023)患者調査の概況(2024年)
- 筑波大学 健診で指摘された脂質異常における医療機関受診状況に関する研究成果発表(2024年)
- 厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
- 大塚製薬 ネクセトール錠180mg(ベムペド酸)製造販売承認・発売に関する情報(2025年)
- 各治療薬の添付文書(医薬品医療機器総合機構:PMDA)
監修者:
わかばやしクリック 内科
小林直人 著・編
(内科学会認定医・腎臓学会認定専門医)