
皆さま、こんにちは。わかばやしクリニックです。
「しっかり寝ているはずなのに、日中ずっと眠い」 「ご家族から『夜間にいびきが止まっている時間がある』と指摘された」
このようなお悩みを抱えていらっしゃる方はいらっしゃいませんか? もしかするとその症状は、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)」が原因かもしれません。
今回は、睡眠時無呼吸症候群の主な症状や体に及ぼす影響、セルフチェック項目、そしてクリニックでの検査・主な治療法について分かりやすくお話しいたします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に空気の通り道(気道)が塞がれるなどして、一時的に呼吸が止まったり、浅くなったりする状態を繰り返す病気です。
10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上生じる場合に診断されます。睡眠の質が著しく低下するため、日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こします。
日中の眠気をチェック!「ESS(エプワース眠気尺度)」
ご自身の日中の眠気の強さを評価する世界的な基準として「ESS(Epworth Sleepiness Scale:エプワース眠気尺度)」があります。
最近の日常を振り返り、以下の8つの状況になったとき、「どのくらいうとうとする(数秒〜数分眠ってしまう)か」をイメージしてチェックしてみてください。
【点数のつけ方】
-
0点: 決してうとうしない
-
1点: まれにうとうとする
-
2点: 時々うとうとする
-
3点: 高い確率でうとうとする
【8つのチェック項目】
-
座って読書や書類などを読んでいるとき
-
座ってテレビを見ているとき
-
会議や劇場など、大勢の人がいる場所で静かに座っているとき
-
乗客として、休憩なしで1時間以上車に乗っているとき
-
午後に横になって休息をとっているとき
-
座って人と話をしているとき
-
お酒を飲まずに昼食をとった後、静かに座っているとき
-
自分で車を運転中、渋滞や信号で数分間停車しているとき
【判定の目安】
-
合計 11点以上: 日中に強い眠気があり、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が疑われます。早めの受診をおすすめいたします。
放っておくと危険?全身の健康への影響
睡眠時無呼吸症候群は、単に「日中眠くなる」だけの問題ではありません。
呼吸が止まるたびに体に強いストレスがかかり、血中の酸素濃度が低下するため、心臓や血管に大きな負担を与えます。放置すると、以下のような生活習慣病や重篤な疾患のリスクが高まることが知られています。
-
高血圧
-
糖尿病
-
心筋梗塞・狭心症
-
脳卒中(脳梗塞・脳出血)
また、日中の強い眠気によって運転中や仕事中に重大な事故を引き起こす危険性もあり、早期の発見と治療が非常に大切です。
当院での検査の流れ
当院では、睡眠時無呼吸症候群が疑われる患者様に対し、ご自宅で簡単に行える検査(簡易睡眠検査)をご案内しております。
-
問診・検査のご案内 問診にて症状や普段の睡眠状況をお伺いした後、専用の検査機器をご自宅にお持ち帰りいただきます。
-
ご自宅での簡易検査 手の指や鼻の下にセンサーを装着し、普段通り就寝していただくだけで、睡眠中の呼吸状態や酸素濃度を測定できます。
睡眠時無呼吸症候群の主な治療法
検査結果や病状の程度(軽症〜重症)、患者様のお体や生活スタイルに合わせて、以下のような治療・アドバイスを行います。
1. CPAP(シーパップ)療法(持続陽圧呼吸療法)
-
対象: 中等症〜重症の患者様
-
内容: 就寝時に専用のマスクを装着し、装置から圧力をかけた空気を送り込むことで、喉の奥の気道を押し広げて塞がるのを防ぐ治療法です。多くの患者様が「睡眠の質が上がり、日中の眠気が軽減した」「頭がすっきりするようになった」と効果を実感されています。
2. マウスピース療法(スプリント療法)
-
対象: 軽症〜中等症の患者様、またはCPAPの着用が難しい方
-
内容: 就寝時に専用の器具(マウスピース)を装着し、下あごを少し前に引き出した状態で固定します。これにより舌が落ち込むのを防ぎ、気道を確保します。持ち運びが簡単で出張や旅行時にも便利です。(※作成の際は提携する歯科医院をご紹介いたします)
3. 生活習慣の改善指導
-
対象: すべての患者様(基本となるアドバイス)
-
内容: 症状の軽減や予防のために、以下のような生活習慣の見直しを行います。
-
減量・体重管理: 首周りや喉の奥に脂肪がつくと気道が狭くなるため、適正体重の維持を目指します。
-
横向きでの就寝: 仰向けで寝ると舌が落ち込みやすくなるため、抱き枕などを活用して横向きで寝る工夫を提案します。
-
節酒・禁煙: アルコールは喉の筋肉を緩め、タバコは気道の粘膜に炎症を引き起こして呼吸を妨げるため、就寝前の飲酒を控え、禁煙をおすすめします。
-
おわりに
「単なる疲れや寝不足」「いびきくらいで受診するのは…」と遠慮される方も少なくありません。しかし、睡眠の質を改善することは、将来の健康を守る大切な第一歩です。
ご自身のお悩みはもちろん、「家族のいびきが心配」というご相談も承っております。気になる症状やESSチェックで気になる点がありましたら、どうぞお気軽に当院の耳鼻咽喉科または内科までご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関するよくある質問(Q&A)
Q1. やせ型(太っていない)なのですが、睡眠時無呼吸症候群になることはありますか?
A. はい、体系に関わらず発症する可能性があります。 肥満は大きなリスク要因の一つですが、日本人をはじめとするアジア人は、欧米人と比較して「あごが小さく奥に引いている」「下あごの骨格が細い」といった骨格上の特徴を持っています。そのため、太っていなくても気道(空気の通り道)が狭くなりやすく、やせ型や標準体型の方でも発症することが医学的に証明されています。
Q2. 市販の鼻拡張テープや「口閉じテープ」で治すことはできますか?
A. 一時的なサポートにはなりますが、根本的な治療にはなりません。 鼻づまりが原因で口呼吸になっている軽度の場合には補助的な効果が期待できますが、睡眠時無呼吸症候群の主な原因は「喉(のど)の奥や舌の落ち込み」による気道の閉塞です。テープだけでは喉の奥の閉塞を防ぐことはできないため、自己判断で放置せず、医療機関での適切な検査と治療をおすすめいたします。
Q3. 治療薬で治すことはできますか?
A. 直接改善する飲み薬(内服薬)はありませんが、肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群に対しては「抗肥満薬の注射薬」が適応となっています。
-
飲み薬(内服薬)について: 物理的に気道が塞がることが原因であるため、現時点で無呼吸そのものを直接治す飲み薬はありません。(※アレルギー性鼻炎等で鼻づまりがある場合は、鼻炎薬の併用で症状が和らぐことがあります)
-
注射薬(抗肥満薬)について: 体重(首周りの脂肪等)が無呼吸に大きく影響している患者様(肥満を伴う中等症〜重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群)に対しては、体重軽減と症状改善を目的とした抗肥満薬(自己注射薬)の適応が認められています。減量によって気道の閉塞が軽減し、無呼吸の改善が期待できるため、条件に当てはまる患者様には新たな治療の選択肢となります。
Q4. CPAP(シーパップ)治療は一生続けなければいけないのでしょうか?
A. 必ずしも一生続けるとは限りません。根本原因の改善により卒業できるケースもあります。 CPAPは症状を抑えるための「対症療法」ですが、減量(ダイエット)に成功して首周りの脂肪が減ったり、生活習慣が大幅に改善されたりすることで無呼吸の回数が減り、CPAP治療を終了(卒業)できる患者様もいらっしゃいます。また、軽症化した場合にマウスピース治療へ移行するケースもあります。
Q5. 睡眠薬を飲んで寝ても大丈夫ですか?
A. 自己判断での睡眠薬の服用は大変危険です。必ず医師にご相談ください。 一般的な睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)の多くには筋弛緩作用(筋肉をゆるめる作用)があります。SASの方がこれらの睡眠薬を服用すると、喉の筋肉がさらにゆるんで気道が塞がりやすくなり、無呼吸の回数増加や時間の延長(重症化)を引き起こす危険があります。夜眠れない場合でも、自己判断での服用は避けてご相談ください。
※参考文献等
1. 日本呼吸器学会 監修 / 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 監修
『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』
2. 日本循環器学会 / 日本心不全学会 / 日本心臓病学会 / 日本胸部外科学会 等 合同ガイドライン
『循環器疾患における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2023年改訂版)』
3. Johns MW. “A new method for measuring daytime sleepiness: the Epworth sleepiness scale.” SLEEP, 1991; 14(6): 540-545.
4. Takegami M, et al. “Validation of the Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale (ESS-J).” Sleep Medicine, 2009; 10(9): 1050-1065.
5. Malhotra A, Grunstein RR, Fietze I, Weaver TE, Redline S, Sands SA, Schwab RJ, Dunn JP, Chakladar S, Bunck MC, Bednarik J; SURMOUNT-OSA Investigators. “Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Obesity.” The New England Journal of Medicine (NEJM), 2024; 391(13): 1193-1205.